2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『火星の住民と地球の芸術家』

「火星の住民は宇宙人ではない。」この認識が、岡崎氏の議論の前提である。われわれはいかにもナイーヴに「地球人と宇宙人」「地球人VS宇宙人」という二項対立に陥りがちだ。その罠のひとつに、われわれが幼少期に親しんだであろう「ウルトラマン」や「ガ…

ゴール。

12時から14時まで茶店で制作のための設計図にメモ&スケッチを入れる。今日は雲形定規を持って出た。適当な物音や話し声、判然としない人々の動きがどうしても必要なのだった。だがついつい一人でヘラヘラにやにや笑いながら描いていると、「おかしい人…

ロバート・クロネンバーグの『動く家』

「家」の客体性は「住む」という客観性に連続している。連続性を支えているひとつは住所という記号である。住所、または住民基本台帳に帰属性をもつそれ――家は、その内側に住まうヒトを即時的に固定化する。「ホームレス」と名指されるヒトもまた、大なり小…

子供の情景

まあ、われながらセンスがないと思うが、ジバンシイのウルトラマリン(香水)をシュッと部屋に撒き、気分転換を図りつつ、ベッドに寝転んでエリオットの詩集をばさっと広げ、そのページからぼそぼそと声を出して読む。香が鼻につきはじめ、頭がくらくらして…

「IMAGE」と呼ばれる対象についての唯一の回答へのヒント その6

(イメージの論理的発生を考察するためのひとつの例証) 15 まずは以下を見ていただきたい。 ______________http://www.k-tower.jp/ ______________ これは、誰が見てもそう捉えるように「THE KOSUGI TOWER」の…

むずかしい。

『いきの構造』(1930)で知られる思想家の九鬼周造(1888−1941)は、ある寒い晩、京都四条通りの茶店に入り、給士の少女に「紅茶とビスケットをいただけますか?」と注文した。少女は「ビスケットってクッキーのことですか?」と訊いた。そこで九鬼は「クッ…

「思う」について

いずれにしても「思う」という述語表記が、主語を征服している。「私」を収束させ「私」を決定づける「思う」。論理的な思考はその論理によって閉じているが、「思う」に束ねられることによって出現する「私」は「思う」から見出された事後的な「像」へと主…

プラダ青山店

スイスはバーゼルを拠点に活動する建築ユニットであるヘルツォーク&ド・ムーロンが設計した「プラダ青山店」(2003年6月オープン)。2008年に開催される北京オリンピックにおけるスタジアムの設計もコンペティションで獲得したという彼らの設計したこのブテ…

「映画とモダニズム」についてのソフトな会話♪  その2

「映画とモダニズム」についてのソフトな会話♪ その2 ●「モダニズムの定義がいっぱいあるってことは、ポスト・モダニズムの定義もいっぱいあってしかるべきなんじゃない?」 ▼「しかし、どちらも底で支えているのは結局モダニズムって概念だろ?」 ●「そう…

LOHASと白樺派

「世界を良くしようと思えば、かえって事態は悪くなる」というようなことをかつて作曲家のジョン・ケージが言っていた(『小鳥たちのために』訳 青山マミ)。 先日、自称「スロー主義者」なる目上の人物とたまたまお話をしていて、少し考えたことを記してお…

動物はしゃべらない

今もそうだろうが、むかし、動物の出てくるテレビ番組がたくさんあった。『あらいぐまラスカル』とか、『ロッキーチャックは山ねずみ』とかの類である。小さい頃から熱心にテレビを見る方ではなかったが、姉といっしょになってなんとなく見ていた。しかし、…

「映画とモダニズム」についてのソフトな会話♪  その1

「映画とモダニズム」についてのソフトな会話♪ その1 ___________________________ ○登場人物○ ▼君・・・映画についてぼんやり考えている大学生。ちょっと「自分でも映画つくってみたいなあ」と、うすうす思っている。社会学部…

ニャーか、ミャーか?

設計図(シナリオ)に、よりいっそうの精密さを与えるために、昼間から工作みたいなことをしていた。おそらく、設計図の創造とは関係なく、手の触覚が工作を欲していたためだとも思われる。作る最中は音楽をかけなかった。ボール紙と細長の木と、コーデュロ…

『リュック・フェラーリ ある抽象的リアリストの肖像』

疑問を持つ、「それにしても、なぜ、ぼくはこんな他愛もない日記みたいなのを飽きもせず、たらたらと書き連ねているのだろうか」と。誰に読まれているのかは、さて知れず、どう思われているのかも知りえず、とりたてて知ろうともせず、ことさら人にすすめる…

失われた「レマ」

「すみません、エリエリ・・・」と発音したら「あっ、サバクタニですね!」と間髪いれずに受付嬢は言った。やや、びっくりして「ああ、そうです。」・・・つづけて「エリエリ・サバクタニの前売り券にはステッカーがついていますので!」とさらに早口で受付…

『花腐し』を読みながら

昨晩『れろれろくん』についてのエッセーをアップロードしたあと、「ああ、なんておれはつまらない人生を送っているのだ」と、言いようもない虚脱感に襲われ、何もしないままじっと座っていると、こくん、と眠りそうになったので、このまま寝酒を呑んで一気…

『れろれろくん』

●1『れろれろくん』はリテラルには、サイケデリック絵本である。これを読むことは一種の中毒的快楽、そして無限の反復的、増殖的リズムに身を投じることであり、非−空間的なサイケデリアに身を任せることである。そしてこの非−空間的サイケデリアから『れろ…

流れ

昨晩は『れろれろくん』についてずっと考えていたのだが、頭が痛くなってしまった。ぼくが『れろれろくん』を買ったのには、ちょっとした事情がある。それはぼくのパートナーであるジュリが『れろれろくん』を岡崎乾二郎から直接もらったということに起因し…

aikoの『アスパラ』

たぶん、ミルク味のアイスキャンデーなのだろう、真夏の午後、からみつくような熱気にさらされ、それはみるみるうちに溶けていった。気がつくと白い液体が彼女の指にまとわりついていた。サッとティッシュで拭き取るのでもなく、ペロっと舐めるのでもなく、…

「IMAGE」と呼ばれる対象についての唯一の回答へのヒント その5

(休憩:TOWERを横に、逆さまに) 「・・・そうなの、しゃべるってことは真実を引用することでなきゃいけない。ブレヒトおじさんがそう言ってたわ。俳優は引用すべきだって。」(『女と男のいる舗道』) ★1 東京タワー(1958年建造)の権威(象徴的な…

同性愛者同士の入場お断り

裸体、というにはあまりにもその輪郭がはっきりと目だちすぎ、肌つやの陰影を欠いた女体たち。裸体、例えばゴヤの描いた「裸のマハ」、あるいはジャック・リヴェットのものしたエマニュエル・ベアールの「美しき諍い女」、そうではなく、裸体としての同一性…

手袋はめて

1月8日付けのdcsyさんのブログで昨年末に起きた早稲田大学不当逮捕事件のことを知った。ひどい話だ。世の中にはいつまでたっても偉そうにしている人がいるということを改めて感じ入った。早稲田大学のことは良く知らないが、通念的には、大隈重信で、…

一月の光

一月の光(ニーチェ)。景色がよく磨かれたガラスのようにクリアに眼に映る。水平線間際に小さな雲がぽつぽつあるだけで、天空はまばゆいほどの青を湛えている。13:30起床。煙草を買いに出たついでに、くるりの「NIKKI」とシンガーソンガーの「ば…

日本ロック雑誌クロニクル

10時起床、やや寝不足気味。3日ほど前から2008年北京オリンピックに備えて、マオイストとブラックパンサーの関係を調べようと思い、1967年から1970年までに発行された『THE BLACK PANTHER NEWSPAPER COLLECT…

フランスにおけるギー・ドゥボールの最近の受容については

http://d.hatena.ne.jp/dcsy/20060106 を見よ

エプロン

十時に起きた。なぜか、昨日の寝しなに「明日はエプロンを買いに行こう」と決めてかかっていたので、フロに入って、さっさと身支度して部屋を出ることとなった。大きなサイズの街に出かけるのも面倒なので、小さなサイズの町、仙川まで歩いて出た。歩いてい…

「IMAGE」と呼ばれる対象についての唯一の回答へのヒント その4

(用語の整理) 12以下、本文では、「事物」「像」「イメージ」「表象」の4つの類義語を扱う。混乱を避けるために、4つの語を2つのカテゴリーに分けておく。「事物」「像」は実在論的対象を示す用語である。「イメージ」「表象」は観念論的対象を示す用…

若造

その慎重さを欠いた、ひとつひとつの無頓着な言葉尻に多少のムカツキがあったにせよ、現代社会の変形(革命的転覆ではない)をわめきちらすように説く若造に会い、ぼくは多少目の前が明るくなった。社会変形の手段、集団組織の仕方、個人生活のレベルにまで…

ヴィヴィアン・ウェストウッド展から回想されたもの

「パンクは重要な現象だ。」とバロウズはヴィクター・ボクリスの『ウィリアム・バロウズと夕食を』の中で呟いていた(たしかジョー・ストラマーとの対談だったと思う)。しかし、そもそもパンクが重要だというのは、どういうことか?それはモーツァルトが、…

「IMAGE」と呼ばれる対象についての唯一の回答へのヒント その3

(切断面と即時性) 9 像、他者の発話、文字、風景、ちょっとした徴から「A即B」という原則に基づいて<われ‐われ>の記憶は即時的に<そこ>から析出される。<そこ>とは、記憶の入口と出口が一枚の紙の表裏のように貼りあわされている<状態X>であり、…