「映画とモダニズム」についてのソフトな会話♪ その1
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○登場人物○
▼君・・・映画についてぼんやり考えている大学生。ちょっと「自分でも映画つくってみたいなあ」と、うすうす思っている。社会学部。髪型は七三わけ。最近の興味はモダニズム。
●さん・・今ふうの大学生。美学を学んでいる。ちょっと将来が不安。髪型はふつう。最近気になるのは「オムレツはなぜうまいのか?」
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▼「いきなりだけど、モダニズムという語って、なんだか捉えにくいよね?」
●「そう?なんでかしら?」
▼「いろいろな文脈でころころと使われ方が変わるような気がするんだ。・・・例えばきみはモダニズムという語から何を連想するの?」
●「ううん、そうね、やっぱりモダンな建築とか、モダンなリビング・ルームだとか・・」
▼「そうか、それはじゃあ、ある意味で、建築にモダニズムを感じるんだ。」
●「そうね。それに、なんかこうきっちりした服装とか、話し方とか・・・整然としてて、しっかりしていて、たゆまないって感じかしら。モダンな人、とかとも言うし。」
▼「たゆまないか・・・たゆまぬ努力?これもモダニズムか。ううん。なるほど。じゃあ建築以外のものも含むんだね。」
●「そうね。そうだわ。竹久夢二とか、高畠華宵とか、・・・これは大正モダンっていういいかたになるのかしら。いずれにしても、そういうイメージだわ。要するに近代的ってことでしょ?でも、なんであなたはモダニズムという語がいっぱいある、なんて言うの?」
▼「語がいっぱいあるなんて言ってないよ。いろいろな定義や考え方がいっぱいありそうな感じがして、どうにも捉えがたいって言ってるんだよ。」
●「どういうこと?」
▼「ううん、そうだな。例えば、とあるおじいさんなんかは第一次大戦の時にモダニズムというのが始まったって言うんだ。なんていうのかな、いろんな芸術ジャンルが<モダニズム!>って叫びだした時代らしいんだ。詩とか建築とか、絵画もそうだし。」
●「あっそれなんか知ってる〜。マレーヴィッチとか?」
▼「そうそう、そういうモダニズム現象が日本に輸入されて・・・詩人で言えば西脇順三郎とか。」
●「ふうん、よく勉強してるね。」
▼「そうなんだ。こう見えてもぼくは学習家だから。って言っても、本屋に行ったら『西脇順三郎とモダニズム』っていう本があったんだ。それで西脇順三郎という人はモダニストなんだ〜と思っただけなんだけど。」
●「な〜んだ。それで?」
▼「また、ある人はカントという哲学者がモダニズムの始祖だと言うんだ。またある人は、戦後の勃興のことをモダニズムだと言うんだ。またまたある人はボードレールこそが、モダニストの第一人者だって言うんだ。わけがわからないよ。」
●「そうね。多分みんなそれぞれのMYモダニズムがあるのよ。MYブームみたいに。でも、わたしはもっと簡単に捉えているよ。おかあさんも言ってたけど、やっぱりいい洋服を着るとか、それを着てパフェを食べるとか、いい車乗って、出かけるとか、そんな生活全体がこう・・なんていうのかな・・華やかでないとしても・・・モダンな暮らしよ、ありがとう!みたいな。」
▼「急にでかい声だすなよな。・・じゃあ、いい洋服も着てないし、パフェも食べないし、車も乗っていないぼくなんかは、ぜんぜんモダニストじゃないってことになるじゃないか?!」
●「そうよ。だからモダニストたるにはお金がかかるのよ!きっと。」
▼「そうか、それはびっくりしたな。じゃあ働くとかお金を稼ぐとかってのも、モダニズムと関係があるのかい?」
●「そうよ。たぶん経済の仕組みとか、資本主義の仕組みとか、いろんなものが関係しているのよ。」
▼「それはそうかもね。だけど、モダニズムの定義や捉え方がいっぱいあるってぼくは言ったけど、そのいっぱいあること自体がすでにしてポスト・モダニズム的な状況だと思うんだー。」
●「また屁理屈言ってる・・。」
▼「屁理屈も理屈のうちだよ。」
(つづく)
<付記>
『「映画とモダニズム」についてのソフトな会話♪』を一定期間続けて書いてみようと思います。おちゃらけている要素も際立ってしまうかもしれないけれど、まじめに考えます。以前、モダニズムについていろいろと調べ、批評家諸氏と、座談会までひらいた(2004年9月)のですが、ふたたび興味が浮上してきたためです。『「IMAGE」と呼ばれる対象についての唯一の回答へのヒント』とあわせて読んでいただければさいわいです。尚、登場人物は増える可能性があります。