2007-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ビリー・クルーヴァーの『ピカソと過ごしたある日の午後』

ある日、つまり1916年8月12日、若き日のジャン・コクトーは母親のコダックカメラ(オートグラフィック・コダック・ジュニア)を携えて、当時モンパルナスを根城にしていたピカソや彼の友人たちを撮った。しかし、その後29枚のスナップ写真はバラバ…

『刺青』

つい先日、渋谷ユーロスペースのレイトショーで『刺青』(しせい)を見た。原作(谷崎潤一郎)と照らし合わせてドーノコーノ言うのはさておき、少し感想を述べておきたい。 流行の顔がある。それはファッション誌やテレビメディアが先導して「これこれこうい…

『砂の女』

たまたま『砂の女』(1964)をヴィデオで見た。面白かったので少し感想を述べておきたい。『砂の女』は、多くの論者が言うようにフランツ・カフカの小説、(個人的には『流刑地にて』)を連想させる。それは「条理空間」を「自然空間」と捉える一方で「…

『みやこ☆音楽』V・A

『みやこ☆音楽』(ノイズ・マッカートニー BNCL-26)は、くるりの岸田繁がプロデュースした「京都音楽百景」(帯文による)である。ポーランドの女性革命家(1871〜1919)を、そのバンド名の由来にもつローザ・ルクセンブルグの『橋の下』からはじま…

相撲

平成十九年大相撲初場所四日目を見に両国国技館へ行ってきたのだが、生来、普段スポーツ観戦をまったくしないだけあって、新鮮な体験だった。小学生の頃、母親が相撲好きでなぜか家で流れるテレビを見るともなく見ていて「輪島」や「千代の富士」などの名前…

中沢新一「映画としての宗教」

なぜか隣に住んでいる可能涼介は文学業界と多少の繋がりがあるらしく、毎月文芸誌が彼の手元に数冊送られてくる。そして就寝前、私の部屋でワインを呑んだついでに「これを読みなはれ」と薦めることがあり、雑誌をそっと置いていく。先日、彼が薦めたのは中…

アントニオーニの『赤い砂漠』

ミケランジェロ・アントニオーニ監督、モニカ・ヴィッティ主演の『赤い砂漠』(1964)をヴォデオで見直す機会があった(ちなみにDVDは生産中止になっているらしい)。とりたてて主張すべきことはないが、累計して5回は見ているのだからこの映画にはちょ…

ビル・ヴィオラの「はつゆめ」

寒空の中、森美術館に足を運んだ。森美術館へ行くのには2つ理由があった。ひとつはビル・ヴィオラの「はつゆめ」と題されたヴィデオインスタレーションを見に行くこと、ふたつ目は52階で夜景を眺めながら酒を呑み、タバコをふかすことであった。 ヴィオラ…

大矢真梨子個展

http://www.punctum.jp/ohyamariko.html 今回は、写真の評論家でもなんでもない私が失礼ながら「なぜ大矢真梨子の写真は素晴らしい」かをざっくばらんに記しておこう。2006年、あちこち出歩く中、もっとも感銘を受けたのは京橋のギャラリープンクトゥム…