2004-01-01から1年間の記事一覧

ことさらにそれを嘆くわけではなく、私の声は私の言葉に亀裂を入れる。要するに声が先行して言葉を引き裂いているような気がする。だが、この否定的なプロセスは決して脳の退廃には結びつかないし、むしろ、脳を活性化させるもっともな刺激剤になっているよ…

9/11付の日記で触れた「きれいな娘さん」らしき人物がたまたまテレビ画面に現れたので、一応目を通す。(というよりも画面が目を通る)。どうやら『東京湾景』という日韓関係を扱ったドラマの最終回らしい。ことごとくイメージ回収的であり、とりたてて…

季節の変わり目の殺人的な人ゴミの中、視線は水平を保つことができず、斜め下、あるいは斜め上にその安定を求める。そこで、渋谷駅ホームにでかでかとハングル文字が踊る巨大看板に視線が吸収される。どう考えてもきれいなお姉さんとしか思えないその端正な…

ジュリディジュであれ、ブルースハープであれ、エレクトリックギターであれ、音楽の聴取において<速弾き>に耳を奪われる時がある。聴取しながら読書したり、メシを食っていたりしていても、ふと、気付けばその手をやすめている。純粋に音を三半規管にパス…

「決して想像させてはならない。想像を禁止する。今、ここの像(ビルド)の消費がすべてだ。プログラムされた像をプログラムにのっとって完璧にやつらに消費させよう。七人の小人の中にホンモノの七人の小人が入っているなんて事は、やつらには決して想像さ…

すっきりした。患部を切除したからだ。弁慶の泣きどころの傍、熟しきったプラムのように腫れ上がっていた患部にやたらに陽気で吐気のある老外科医は麻酔を打つ事もせず、いきなりメスを入れた。流血は成功した。老外科医は豪快に笑う。「ここまで放っとくと…

左足が負傷。2、3日で「サクランボ→梅干し大→プラム」と、みるみるうちに腫れ上がってくる。不安が募り、医者に行ったが土曜は休診。近所のカテイ薬局へ。おっちゃんは、「体内でリンパ菌と白血球が闘っているのだ。だから腫れるのだ。」と申す。部屋に戻…

「物事を考えたいのだが、考えられない。」これを考えるにあたって最近(僕の中で)支配的なのは、「なぜ考えられないか」の一般解として「暑いから」とか「寒いから」を言い訳にする事はいたって簡単である、この事であろう。ところで、なぜ、この言い訳は…

重くのしかかる灰色の真昼頃、千駄木に向かう列車の中で、わずかな偏頭痛を抱えた僕の右隣に薄い灰色の上下服を着た修道女が座った。前方の座席には母親と子供が座っている。僕が勝手に推定すると、39歳と3歳だ。子供は母親の右腕の上方から下方に向けて…

「アニマル京子は東山千栄子と似ている。」だが、この記述は間違っている。「東山千栄子がアニマル京子に似ているのであって、アニマル京子が東山千栄子に似ているのではない。」なぜか?それは「見た順番」と関係がある。 昨晩、就寝前にフトンにもぐりなが…

用件をサっと言ってサっと切るタイプだと、その話相手が察しているのだろうか、長電話を普段めったにしない僕でも、それでもたまには長電話をする。つい先日、来月なかばのイベント(↑参照)に参加してもらう映画批評家であるとカネガネ盲信していたが、実は…

目下のところ、『日本霊異記』に注目している僕だが、『日本霊異記』を読んだ事もないのに、なぜ『日本霊異記』に注目しているのかがさっぱり分からない。と、思いつつ、現在の体力と精神力からいって、とても90分で読めそうもないだろう『90分で読める…

普段テレビを見る習慣のない私は、それでもたまにテレビのスイッチを入れる。 今日は13:07分頃にスイッチを入れた。決まりきったように何かが映っている、その事実をぜんぜん意識できないくらい、うんざりするほど何かが映っているのだが、例によって…

とくに「これを」というわけではなく、『ロビンソン・クルーソー』75分をあからさまに淀川長治がセレクトしたことをそのパッケージにおいて主張するヴィデオ・カセットで見る。「ダグラス・フェアバンクス イン・・」と冒頭画面にデカデカとクレジットされ、…

およそ映画でも絵画でも塗り絵でも彫刻でも、<非ー言語的表象>なるものにおいて、<像そのもの>を<像そのもの>として他者に伝達することはできない。<像>をより完全に伝えるためには、いかなる言語にも頼ることなしに<像>の完全な模倣を他者の目の…

アレンジメントは、オリジナル神話を解体する。 同じ『ゴールドベルク変奏曲』でも、ポリーニとグールドとポゴレリチではまったく音の現れ方が違うように、固有の作品ー媒体はアレンジ次第でその輪郭を奪われる。作曲者に対する演奏者という相対性を忘れて聞…

洗濯をするのはいい。洗濯ものを干すのもいい。だが、洗濯ものを畳むのがめんどくさい。

特にこれが見たいという訳ではなく、『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』(1975)をシネマスコープサイズからヴィスタサイズにトリミングされたヴィデオカセットで見る。単体の『男はつらいよ』ではなく、シリーズの『男はつらいよ』の事を考えるたびに次のトリ…

『チキチキ・バンバン』

『チキチキバンバン』の歌は知っていたが映画は見ていなかったので、ヴィデオ・カセットで『チキチキバンバン』(1968)を見る。本題は『chitty chitty bang bang』なので『チッティーチッティーバンバン』だろうが、どうして「チッティー」が「チキ」となっ…

『ストレート・ノー・チェイサー』には強度があり、『ストップ・メイキング・センス』には諧謔があった。『ステップ・アクロス・ザ・ボーダー』には享楽があり、『ザ・ウォール』には抵抗があった。・・・・シアトリカリティーの連発的現前に失笑しながらもC…

勉強になった。

とりわけ大阪梅田のLOFT地下にあったテアトルは客席フロアの傾斜角度が十全に計算されたものだった。要するに客席数とスクリーンの大きさとのバランスを計算した上で的確にスロープがとられている。そして、ここシネ・セゾン渋谷もまた、肩までではなく、頭…

めっぽう品揃えの悪い紀伊国屋書店笹塚店で『制作』という、味も素っ気もないタイトルが気にいって手にとって見た文庫本は、表紙にセザンヌの『水浴する男たち』があしらわれていた。著者はエミール・ゾラ。本を開いて見ると最初のページには紙にマネの描い…

明大前 喫茶マイルス

明大前で軽く夕食を取った後、すずらん商店街の喫茶マイルスへと足が向いてしまう。この店でかかっている良音質のジャズはともかく、女バロウズといった、やや「への字口」だからか、きりりとした面持ちの老店主がLPレコードをセッティングし、小さく折り畳…

「公園の遊具にはなぜ色がついているのか?」と考えていると「子供が遊ぶのに危ないから」との単純な回答に至った。そして「なぜこの公園は<赤・青・黄>の三原色ではなく<ピンク・青・黄>なのか?」と考えたが、分からなかった。夜風にあたりながら安酒…

その昔、日大で映画理論を学んでいたという小川原さんと新宿の喫茶店で会う。彼女にとある事を依頼するためだ。なにぶん、昨年末に「ドラヴィディアン・ドラッグストア」という大寺眞輔という映画評論家の方が主催しているウェッブ・サイトの忘年会に呼んで…

美の条件

「塵」(ゴミ)ではなく「護美」(ゴミ)。よくできた当て字である。要するにあらかじめ確定された「美」はこの世に存在せず、その都度「美を護る」事を可能にする「ゴミ」の存在こそが美の条件なのだという「教え」を含んだ当て字なのだろう。しかし、新作…