用件をサっと言ってサっと切るタイプだと、その話相手が察しているのだろうか、長電話を普段めったにしない僕でも、それでもたまには長電話をする。つい先日、来月なかばのイベント(↑参照)に参加してもらう映画批評家であるとカネガネ盲信していたが、実は最近映画作家にメタモルフォーゼされたところの安井豊さんと長電話をした。長電話、と言ってもおそらく30分以上1時間以内くらいだろうが、僕にとっては、30分ヘッドフォンでヤイコのベスト盤を聞くよりも遥かに長く感じられるし、つくづく立派な長電話である。どういう用件だったかは覚えている。僕が京都にいたころ、数少ない金井美恵子&松浦理恵子の熱狂的ファンだった事で知られていて、数回顔を殴られそうになったと記憶する、「タナカノリちゃんの電話番号を教えて欲しい」という旨をユタカ氏の妻であるところのチエ氏の用件内容をなぜか、ユタカ氏が代弁されていたのだ。ここで長電話の内容をナガナガと触れる事はできないが、「知られざる&驚くべき蓮実重彦のハード・コア」なるクリティカル・ポイントをめぐっての話だった。時間にして約5分は占めたのではなかろうか?と、電話を切った数分後に妻であるところジュリちゃんより携帯的電子郵便が入る。「ナガオちゃんの結婚式どうすんの?出るの?出ないの?」と言った内容だ。これまたナガオちゃんとは、懐かしや、僕の短い大学時のキャンパスメイト、と言うよりも、スロッビング・グリッスルの雷的象徴のティーシャツを着て、SPKのとある一曲に挿入される「スワニアポーン」というフレーズがお気に入りで自ら「SWANIAPON」というDJネームを誇りつつ、祇園にあるのだが、ちっとも祇園らしくないクラブ・コンテナでたまに皿回していたと記憶されるノイズガールなのだった。事のついでに言うと彼女は元東大総長ならぬ、現京大総長の娘であると同時に日本で初めての女神職に現在従事している人物だ。僕は彼女に一発平手打ちをくらったことをおぼろげに覚えているのだけれど、多分酔狂だったのだろう。「・・・なので、いけません。」と返信し、一件落着した所で、たしか本々堂というところから出ていた高橋悠治坂本龍一の『長電話』という、「これを読めば必〜ずやる気がなくなる!」と常々確信していたところの注目すべき対談本を思い出した。コンピューター制御による流しソーメンをめぐっての高橋悠治のなんてことのない話が新鮮でよかった。