新・映画ノート 4 ⚫ 2018・1



以下は2018年1月内にtwitterにおいて散発的に記述したメモの再録である。誤字脱字、その場のノリ、思いつきで書いたもの、も含めてそのままに再録しておく。なお、観賞作品が前後している箇所があるので注意されたい。


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つぐみ 1990(原作は1989)。最初の30分。タイトルバックに15分もかけていて、これでもか(これみよがしに)と贅沢なクレーンショットとレールトラッキングが見れる。病弱もの日本シネマという系譜に入れてよいかと思うが牧瀬里穂の病的ヒステリーがダサ痛く見えるのは映画音楽のせい。




劇伴のパターンで同一フレーズ(テーマ)をこちょこちょアレンジ変えて流すのあるけど、全面的に叙情に回収しているの許せない(というか牧瀬里穂がかわいすぎなのでオッサン&少女が許す構図が不毛。)。CMあがりの市川準は映画に関して多くのことを知っているが映画音楽認識はいまいち。






別に闘病を見せたいわけじゃないと思うけど夭折の堀辰雄の「風立ちぬ」のパターンなのだ。これぞ日本文芸。お箱中のお箱中だった。今もか?それは知らん。




野性の証明 1978(森村誠一の原作は1977) 最初の30分観賞。山中ヘリコプター出現。自衛隊の飛行訓練があったり、田舎の村でゴードンルイスばりの鮮血スプラットな大量殺人があったり、沼から真っ赤な車が引き上げたり(これは保険金めあての殺人?)てんやわんや。







高倉健の寄ったスナックのホステス役が絵沢萠子だったり、薬師丸ひろ子(強引幼少期役)のツインテールが見れたり。冒頭、要素を分散的にぶちまけて、あとで(観客に)繋いでいってもらうめんどくさいパターンか?角川映画の気合いというか侠気がぷんぷん出ている日本製アメリカ映画だ。





あと、浅間山荘事件よろしく山小屋のなかで世界同時革命を拡声器で唱える革マル派(赤軍?)みたいなのも出てきたし、夜のアーケード商店街を派手に暴走する暴走族もでてきた。(ボスは舘ひろしか?)……30分見ただけなのに、なんがなんだかわからねえ…






あと地方有力者だけがあつまっているパーティで三國連太郎が中央集権批判(東京一局集中批判)をしていた。……ひとついえるのは高倉健以外はズーズー弁?





つぐみ は 京都に祇園会館という二番館があったころ、2本立てのうちの1本として見た。あの巨大なスクリーンと観客席。そしてガラガラにもほどがあるほどのガラガラぶり。見た当時は市川監督の BUSU が好きというよりも富田靖子がまあまあ好きで





その話は有名な「八百屋のお七」(好色五人女西鶴 のうち一人)を模したものだった。 恋仲に会いたい一心でもそれが叶わず、江戸の広範囲にわたって放火し捕まり、鈴ヶ森の処刑場(現在の大井競馬場の近く)で火刑に会ってしまう少女の話だ。




市川準岩井俊二犬童一心なんかが映画版・新日本浪漫派と手前勝手にカテゴライズしたくもなるが、本家の保田與重郎は (今のネトウヨが最悪だとして)最良のリアル右翼みたいなものでそれは後鳥羽院(新古今和歌集の編集者)が流刑の身にあった歌人、とかそんなところまで射程に入れて




ある種の理念を提示しているのだ。





数多ある「時代劇」の実体は知らないが、……何が言いたいのか……ようは日本にはパゾリーニがいないということ……


松井さん(松井良彦監督)とだいぶ以前に話したとき「おれはパゾリーニとかに影響受けている」と仰っていて、「そうかなあ。」と思ったことがある。たとえば「追悼のざわめき」におけるポエジー寺山修司のそれを薄めたものでありどちらかといえばストレートなリアリズムに寄っていると思うけどな。





しばらく「追悼のざわめき」について考えていたが、良いところはマイノリティの容態に踏み込んでいる(肉迫している)ところ。ダメなところは、それを薄められたポエジーに回収しているところ。か。美的昇華=ポエジー化という最初にして最後の次元があったんだと思うな。






富田靖子広瀬すず
牧瀬里穂市川実日子

の系譜はあると思うけど

和久井映見綾瀬はるか

は ない



しかし原監督(原一男)を交えて呑んで会話した時(みなみ会館の佐藤さんの計らい……全身小説家の頃)、監督は「つぎは富田靖子主演で劇映画撮ろうと思っている」と仰っていて、その顔が異様に深刻な表情だったのだけど、「え!劇映画すか!?」と返すしかないという…





こともあった。そして つぐみ 60分あたりまで。あのテーマ曲のリフレインにつぐリフレイン……呪いの音楽か。気を取り直しスーパーへ食材買いに行ったがいろいろ売り切れててうんざり。そしてレジに並んでいるオレの前のおばさんの籠に入っている生理用品が妙に存在感を放っていて目眩がしそう……






出かける用事もなく、実家の母親と連絡とっても「寒いから暖かくなってから帰ってきて」ということで、ダラダラ。……記憶障害研究所というところで「お父ちゃんを殺さないでけれ!」という薬師丸ひろ子(予知能力がある)のセリフで停止ボタン。60分くらい。野性の証明 けっこう面白いな。




リンゴの皮をむく高倉健。いいショットだ。




空間の処理の仕方とかけっこう面白い。高倉ー薬師丸の父娘の住んでいる家の部屋内部とか、家が家であることの安定性ではなく、常に危機にさらされている中間的中継的な場所として空間がある、と思わせる撮り方。あえてバシッと決めない撮り方ゲシュタルトしにくい撮り方つうか



つぐみ 観了。 ひとえに病人というが病気の多様性があり、しかし映画の中では病名が最後まであきらかにされず、見ているぶんには(今で言う)アスベルガー(ひらたくいえば発達障害)に近いものとして描かれているように思えた。 牧瀬の「熱出すとハイになる」というセリフは、理性と非理性の往復





を生きていてそれを肯定している、ということになり、その肯定ぶりが物語を駆動させていたんだけど、最後にそういう甘ちゃんな自己を反省する=大人になる という落ち着き方(手紙文明で知らされる)はどうか…結局ふつうの大人になること礼賛…ということか。




中島朋子はずっと下品な顔(下唇より上唇が1.3倍大きい)してて牧瀬を上回る田舎のビッチとして演出することは不可能だったのか。原作読まずに好き勝手言ってるけど。




都市→田舎という距離を利用したナラティヴなんだけど、まあ田舎の度合いがなさすぎるし、やっぱり真田広之が海岸で不良にからまれボコボコにされるシーンもうちっと寄りで撮った方がいいんじゃねーのか。



市川準特有のCM的手法の脚本で、まずマーケティングありき。そんで消費層のターゲット設定してその上で「やっていいのはここからここまで」という縛りがあったんだろなあ。そういうところは一貫していて、破綻のなさにおいて安心して見れる。そういう無罪&無害な映画だった。







公開時90年代初頭ならともかく今見る価値はまったくなし。白島靖子が激美人に撮られてて(というか全編ソフトフォーカスのフィルターで雰囲気づくり意図的にされてんだけど)、 彼女出ていた櫻の園(中原俊監督)見直したくなった。




長い!野性の証明 観了。長いのは罪だ。箔つけに延ばしてるだけか! 1時間40分あたりでサッと切り上げればどれほどいい映画だったことか。高倉健は最高にいいんだけど、梅宮辰夫がウザい。東北の山中でダイナマイト爆破とか、まあいいんだけどバンバンやられてもインパクト逆に薄くなるんだよな。





作り話=騙すこと なんだからそこに留めておけばいいのに、自衛隊兵器(特に戦車)を見せたいばっかりに余計なことしすぎ。バタイユ的に「兵器=使い道のない否定性」が商業映画にスピンオフされて、蕩尽につぐ蕩尽。それだけのことを大衆は鵜呑みにして「すげえなあ」となる。




それで尺延ばししてせっかくの内容をだいなしにしているように思えてならない。1時間40分あたりまではたいへんいい映画だった。あまりにも製作サイドの享楽ぶりが目立っているといえばそれまでだが、唯一舘ひろしを可愛がるヤクザ(大場総業)のボス三國連太郎だけがいちばんマジメな人のように思え





た。サヴァイバリズム、ヤクザの武装主義、金権政治、ジャーナリズムの腐敗、擬似親子愛における真実の愛、記憶喪失と恐怖体験、などモチーフは多岐にわたりその過剰さこそがある種の「奥行き」に通じていてかなりこみいったシナリオ。が前半の説明不足さが嘘のようにまとまってくるのが不思議だった。




まあしょせんは作り話なんだからどんどん作っていいんだけど、男のドンパチ趣味=アメリカンコンプレックスをどうにかしたいと角川春樹がもがきにもがいた映画だと思う。で、この映画ですでに薬師丸は機関銃を持っているのだ。そういうシーンがあるのだった。2018年今も見る価値はあります。





薬師丸ひろ子は絵が上手いのだが、たまに不気味な絵を描くので医者に見てもらってはどうか、と担任の先生(十朱幸代?)が高倉健に説得するシーン。



殿山泰司が画面に出てくるとホッとするのはやっぱり彼は癒し系ですか?




つぐみ で書き忘れだけど、シーン繋ぎでクロースアップ→クロースアップで繋いでいるところが2箇所あってあれはどういう意図で?効果にもなっていないんだけど。






ラストは大人は判ってくれない (トリュフォー) ばりの 顔面ストップモーション(電話中の牧瀬)で、そこでのセリフが(中島に向けられた)「ブス!」。締まらないエンドだったが、クロースアップ繋ぎとなんか関係あるのかな、と。ないよな。意図不明。






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