動物はしゃべらない




今もそうだろうが、むかし、動物の出てくるテレビ番組がたくさんあった。『あらいぐまラスカル』とか、『ロッキーチャックは山ねずみ』とかの類である。小さい頃から熱心にテレビを見る方ではなかったが、姉といっしょになってなんとなく見ていた。しかし、ぼくは「動物が喋るわけない」と思いながら見ていた。そして動物が喋ることによって成立している物語やドラマをどこか疑い深く感じていた。動物に喋らせるのは人間の勝手な行いであり、動物にとって失礼ではないだろうか、とも思っていた。でも、他の子供たちは「動物が喋る」ことを何の疑いもなく受け入れていることが判明し、どこか変な気持ちになった。「テレビやからしゃあないやん!」とある女の子が言ったのを覚えている。ぼくは怒られたような気がしてむしゃくしゃした。動物園にはいろいろな動物がいるが、「動物が喋っている」なんて、見たことも聞いたこともない。動物に喋らせようとした張本人はいったい、どの時代の、どの国の、どんなやつなのだろうか?