■動物園ノート 2
特に「これが撮りたい」という希望はなかったにせよ、動物園にはヴィデオカメラを携えて行った。正門から入って右手に、鳥のコーナーがあるのだが、10種類ほどいた世にも珍しい鳥たちを撮っていた。(特にベトナムからやってきた鳥がかっこよかった)。ヴィデオを回していて思ったのだが、やはり「期待は動きにある」ものだ。ごく一般的に言って、鳥の動きはチョコマカとうるさいものだが、ずでーんと構えている鳥などはたまに首を左右にふるだけで足を動かさない。こちらがカメラを回しているにもかかわらず、ちっとも動いてくれないので合点がいかない。「おれは携帯電話のカメラ機能で君たちの姿を撮っている他の連中とは違って、ヴィデオカメラで撮っているんだぞ、」と、語りかけても、鳥たちは一向に聞く耳を持たないのだ。あと、ヴィデオで撮影する、とは同時にヴィデオに内蔵しているマイクで音響も録音する、ということも含まれているので、鳴き声を発してくれないとこれまた、どうにも都合が悪い。大きな鳥はあまり鳴かない、ずっと黙りこくっているので、これにも多少イライラさせられた。「いい映像が撮れたらちょっとしたインサートショットにも使おうか」という目論みだったが、成功したとは言いがたい。あと、(ソニーのVXシリーズとかを除けば)最近ピントを手動で合わせる「ピントリング」がついていない機種が多くなってきたので、檻の格子と動物を同時にオートフォーカスで合わせてしまおうとし、結局、どちらにもピントが合わないというケースに遭遇するカメラマンもいるのではなかろうか、などと思いつつ、「新機種を買うとしたらどのようなものが良いか」を思いめぐらしていた。そろそろ新しいカメラが欲しくなってきた。
動物園には実にいろいろな動物がいる。今回ベトナム産の鳥以外で、とくに「かっこいいなあ」と思った動物は、アビシニアコロブスだった。アビニシアコロブスとは猿の一種で、紹介プレートの英語表記では「White-mantled Black Colobus」となる。そして、「霊長類 オオナガザル科 アフリカ」とつづいて表記してある(「霊長」という概念がなんのことやらさっぱりわからないが、ここは避けて通ろう)。アビニシアコロブスはその英語名に「ホワイト」と「ブラック」が共存しているように、その見栄えも黒白のツートーンで、スタインウェイのピアノか、あるいはワイズかギャルソンの服を着こなしているような洗練されたアーバニックな装いだ。つややかにしてあざやかなツートーンの毛並みは、ユニクロのフリースを仕方なく毎日着ているような他の猿と違って、とにかく高級感に溢れている。また、佇まいも堂々としている。楽屋で待機する大物歌舞伎役者(ガウンかストールを羽織っている)という感じで、「大人の落ち着き」を見せびらかすことなく仄めかし、彼がソファで葉巻でも吸ったらば「アビニシアコロブス・ザ・マエストロ」という響きがピッタリくるだろう(何の巨匠なのかは知らないが)。また、アビニシアコロブスは木の葉を主食とするリーフィーターで、3つにくびれた胃が、木の葉の消化に役立っているという。3つにくびれた胃・・・どういうことか?・・・これはあまりかっこよくない。(2009-12-11)