『まじめが肝心』はオスカー・ワイルドの風習喜劇、読んだことないけど その1







もう10日前ほどになるが、「嘘と本当」について仕事先のIさんと話していた。とはいえ、よくある「現実(真実)と虚構(嘘)」の話ではない。最近、成人女性が「嘘!?」と言わなくなった(発音しなくなった)んじゃないか?・・・という話である。



もう5年前ほどになるが、わりと近傍にいたとある女性は、ことあるごとに「嘘!?」と言った。おそらく皆さんもそうだと思うが、自分の発言に対して「嘘!?」と言い返されることは、そう愉快なことではない。なぜなら、こちらの発言を反射的に疑っているからである。こちらが本当のことを(それが本当のことだと意識していないほどに本当なことを)言っているにもかかわらず、「嘘!?」と言い返される。そして「嘘!?」が暗に秘めているメッセージとは「相手がその発言を疑っている。」となる。つまりこちらが「疑われている」となる。それで「オレがあんたに疑われるようなことをしたか?!」となる。


彼女の「嘘!?」という発言に対して、わたしは「嘘!?なんていうのはやめろよ。そういう場合は、本当?って言うんだよ。」とストレートに諭したことがあった。その後、彼女の口から「嘘!?」とは聞かなくなった。


ところが、つい先日Iさんと話したのは、「やっぱ、女の口から漏れる<嘘?!>は色気あるんだと思うんだけどなあ。」というわたしの発言からのことだった。女の口から漏れる「嘘?」というわずか0.5秒で発音される音声にある種の「色気」を認めていたのだ。なぜ?・・・たしかに「嘘!?発言=イイ女=色気のある女=謎めいた世界=ちょっとうっとり」という等式を立てることができる。



ひるがえって最近よく耳にする(記号の精度が高い量子的クリッシェというか、なんというか・・・)「ホントですか〜?」(「マジすか?」の丁寧語にあたるのだろうが)、こちらには色気がない。なにかが物足りないのだ。もう一歩というところで。・・・それは、繰り返しになるが女性の口から「嘘!?」をまったくといっていいほど聞かなくなったからである。かわりに「ホントですか〜?」(うたがってるんじゃないですよ〜、たんなる相槌なんですよ〜、「ほんとですか〜。」)が支配的になったからである。





これは、いささかイリュージョナルな自己願望の投影だ。かつて「嘘!?」発言に否定的だったのが、「嘘!?」発言に肯定的になっている。このブランクにはたしかに「マジすか?」とそれの丁寧語「ホントですか〜?」が勃興したという事実性がある。