美食・ニーチェ・便器

■ 美食・ニーチェ・便器





18時30分、マークシティ前待ち合わせ。ガールフレンドと久方ぶりのスペイン・バルで夕食。ロゼ、赤、白、サングリアにつづいて、マンサリアというシェリー酒。アニスやハーブにも似た独特の苦味。キリっとしたシャープな男性的なテイストで、ひとむかし前の大人男性がトニック・シャンプーを好んで使用したり、ザルツとか、ああいういうやたらに苦味のある歯磨き粉を連想させる、そういうとオールド・ファッションドで不味そうに聞こえるだろうが、実のところはとても飲みやすい美味リカー。ちなみにメリメの『カルメン』でも、マンサリアを飲みに行くシーンがある。





さかさまに配置された直径5センチほどの大きめのマッシュルーム。傘の内部に、マッシュルームのエキスを楽しむための液体が注入され、両はじにオシャレ爪楊枝がつきささっている。この楊枝を両手両指で持って、口まで運び、まず傘部に貯蔵されているエキススープをグイっと飲み干してから、マッシュルーム本体をガブつくという風変わりな一品。シイタケ系のダシは美味い。好みである。他、奇妙な玉子焼きとかイベリコポークのチョリッソとか。いろいろ。これだけ食べて二人で10000円。安い。





この店の店主は、なんというか、いい感じのおばさんだ。ユーモアのセンスもあり、さっぱりしていて、シレっとしている。慣れなれしくもないし、だからといって冷たくもない。年季が入っていて、安心できる。また行きます。・・・ガールフレンドが「最近ニーチェを読んでいるの」という。とはいっても昨年ベストセラーになっていた『超訳ニーチェ』で、「こういうのを読むと自己啓発本の類のバカバカしさがわかるわ」という。そりゃそうだ。ニーチェは「女の研究」に長けているというか、最後まで「世俗との戯れ」を捨て切れなかったし、むしろ「戯れ」をとても愛した人だとは思うんだが、しかし、二重三重にひねくれた見方をしていて、そこが面白い、と主張しておいた。女子高生が<そこだけ>読むといいと思う。






あとは最近オープンしたヒカリエ。内藤廣設計の連絡通路がけっこう話題になっていたが、まず、何がすばらしいかというと、エレベーター。この上昇速度がものすごく速い。生涯何回エレベーターに乗ったかわからないが、天に吸い込まれるような感じのものはここだけだ。乗ったのは入り口右端にあるエレベーターだが、他は遅いと感じられた。





11階まで一気に昇って、フロア徘徊。LOWSONのロゴデザインが銀河を意識しているとしか思えない。黒字に白光の「LOWSON」、その周囲に極小ミラーボールが埋め込まれていて、きらきら光っている。そしていきなり駅の改札が出てきた。そんなわけない。11階から電車がはしっているわけがない。しかし、これも「銀河鉄道」を意識しているとなると合点がいく。・・・よく見ると、どうやらオフィスへのゲートだった。フォルムが自動改札口っぽくなっていて、ここも見学価値あり。





次に喫煙室。オフィス・ゲートとともに、ここもカインド・オブ・ブルーな配色。アーチ状のシェイプドウォール。ジャッドの作品のようなアッシュトレイ。曲線と直線の兼ね合いが深夜の銀河鉄道のホームのようで、ヒカリエでは、もっともイリュージョナルな空間だと思われる。やはり、ここも銀河を意識しているとなると・・・。





次にトイレ、ここも銀河か・・・どういう銀河トイレか・・銀河便器か・・・銀河ハンド・ウォッシャーか・・・と、ざわざわ期待したが、がっく〜ん。完全に手を抜いている。便器のセレクトがぜんぜん凝っていないし、この時点で、評価がぐっと下がる。ぐわ〜ん。そして、順々に階下するが、とくにポジティヴな感慨なし。





8階のアートフロアは、やばいくらいにダサい。そのカーサ・ブルータス的なセンスが。1階〜3階のショップ。ガールフレンドによると、メゾンやショップのセレクトは凡庸。導線配置のミス。敷地面積の狭さ。狭いとこに店を入れ込んで家賃をむさぼるという商魂。宇宙服と婦人服のマリアージュを提案したクレージュくらいはいれとかなあかんのちゃうか?





永遠の未完成・・・ユートピア。永遠の未完成の完成・・・ディストピア
英雄待望、終末願望、過去追慕、未来展望、そして、それから・・・





「わたしが何をつくりだそうと、またそれをどんなに愛したとしてもすぐにわたしはその敵対者となり、みずからの愛を敵にまわす者とならなければならない。わたしの意志はこのことを欲するのだ。 」・・・ニーチェ