大阪で生まれなかった女

■大阪で生まれなかった女



備忘録。先日帰省の折に、大阪、奈良、滋賀、神戸と、各一日かけて回ってきた。どこも久しぶりだったので、初めて足を踏み入れる土地にきたかのような面持ちで、といえば大げさだが、とるもとりあえず新しい空気を吸った。



大阪は、千日前、天王寺、あたりを徘徊し、串かつ、(回転しない)寿司を中心に食い呑みだおれの一日だった。大阪は景気がいい。景気が悪くても、景気がいいのだ。それに大阪は懐が深い、と無根拠に思わせる力がある。東京のうつ病患者は、全員大阪に引っ越して、リハビリするとよいかもしれない。なおるかも。あとはとくにおっさんのファッションが、面白い。色彩を大胆に使い、おっさんという既成概念にあてはめることができない。そして帽子を被っていたらなんとかなる、という気楽さがある。



神戸はやはり元町に足が向いてしまう。神戸港、元町あたりで一日過ごした。あの「モトコー」がまだ生き延びてる。すばらしい。が、むかし、外タレのコンサート(たしかクリスタル・ウォーターズだったかな?そうそう、ディー・ライトとかベティ・ブーが流行る前のクラブサウンド)にタダ券で行ったフィッシュダンスホールがなくなっていた。芦屋にあるドナルド・ジャッドデザインの家具ショップにも行きたかったが、時間がなかった。奈良は奈良公園あたり。興福寺へ行った。鹿たちは冬場なのでひっこんでいた。帰路途中、JR奈良駅の裏手を見てまわろうとそちらにぐるっと回ったら、妙な建築物が。なんと磯崎新設計の「なら100年館」だった。壮絶にして滑稽。またの機会に考察したい。



今回の散歩のなかでは、とくに大阪駅の駅ビル内にあるゲームセンターで、「昭和美女列伝」というかなり古いパチンコ台を見つけたのが収穫だった。往年の映画女優を配したもので、高峰美枝子、山田五十鈴などが、硝子盤のむこうで、微笑している。今ではエヴァとか、ルパンで二次元化している向きがあるが、パチンコと日本映画の関係には根深いものがある、ということをかねてから察していて、それが確証できた感があった。



もうひとつ、天王寺の飛田遊郭がすばらしい。ここも20年前に見学しに行ったきりだったが、そのときよりも輪をかけて、その街並みといい、営業スタイルといい、すばらしく感じた。知っている人は知っていると思うが、京都の五条楽園(東京で言えば、州崎に近いかも)に、よりいっそうの建築的美学(建築保存美学)を導入した街並みだ。「先斗町、宮川町なんぞはここの二番煎じだなあ」という気がした。