写真 2



ありえない、なんて、ありえない。





この文章を読んでいる君が、
風呂上りだなんて、ありえない。
その風呂のお湯が、43度で沸かしたものだったなんて、ありえない。
君が、まさか、
セブンイレブンのおでんを夕食がわりにしていたなんて、ありえない。
そして
おでんを食べながら、僕のウェブログに貼り付けた写真を退屈そうに見つめている君なんて、ありえない。






ありえないなんて、ありえない。





恵比寿の一角にひっそりとたたずむラブホテルの一等室のフリーザーに、パピコが冷やしてあるなんて、ありえない。
パピコを食べながらセックスするカップルはありえても、腕時計をはめながらセックスする男なんて、ありえない。そして、
腕時計をはずして、アラームを午前6時にセットする女なんて、ありえない。
ありえないなんて、ありえない。





花火を発明した中国人が、花火をこんなにも愛している日本を憎んでいるなんて、ありえない。



『中国女』に出ていたアンヌ・ヴィアゼムスキーが、あんなにも立体的な唇をしていたなんて、ありえない。



サイレント映画に出演している李香蘭を心底愛している男が、東京都の中央区で「通い妻暮らしをしている」なんて、ありえない。



チャイナドレスのスリットが、アオザイのスリットよりも、美しいなんて、ありえない。





君の誕生日プレゼントを買うために、3時間もひとつの店で迷い込んでいた僕なんて、ありえない。







君と入店した深夜近くのジャズ・バー。その階段を降りて、すぐ右手にマイルス・デイヴィスの絵画が飾ってあったなんて、ありえない。




マイルスの描く抽象画が、こんなにもミロやカンディンスキーに似ているなんて、ありえない。




となりに貼り付けてあった、『赤線地帯』の京マチ子のポスターにキスして、涙していた僕なんて、ありえない。




となりにいたフィンランド人が、「ニホンのスター・バックスは、ユウウツデスネ〜。アメリカは、もっとニギヤカデス〜。」と、つぶやいていたなんて、ありえない。



スマホ。と、発音しおわったあとに口の形態をどうやっていいのか、わからない、なんて、ありえない。





ありえないなんて、ありえない。
ありえないなんて、ありえない、なんて、ありえない。






世田谷のマダムが、下北沢の王将で餃子をテイクアウトするのが、こんなにも好きだったとは!なんて、ありえない。



王将の発祥が、京都だなんて、ありえない。





僕の血液型と君の血液型が同じだなんて、ありえない。



花言葉をひとつも知らない君なんて、ありえない。






かぼちゃの無駄使い、と称して、日本の農民を巻き込んで、反ハロウィン闘争をしでかそうとしていた君なんて、ありえない。






君が明日の朝起きて、仕事をサボることを決意し、新調したライフル銃をピカピカに磨き上げたあと、毛沢東戦争論を30分ばかり音読するなんて、ありえない。






ありえないなんて、ありえない。
ありえないなんて、ありえないなんて、ありえない。





10月20日の調布の花火大会が、こんなにも美しいなんて、ありえない。






君がこんなにも美しい、だなんて、ありえない。