昼食のためにとある店に入った。注文したものが出てくるまで、考え事をしていると、OL風の女の子三人組が店に入ってきた。三人組はひとつのテーブルをしめた。ぴーちくぱーちく喋り倒していたようなのだが、いつしか次のような話題になった。女の子の一人は別の女の子に向かってこう告げた。「今日はなんだか元気がなさそうね。なにかあったの?」。そして、女の子はこう言った。「昨日ね、何人かで、カラオケに行ったんだけど・・・あの○君が私に向かって<演歌を歌ってよー>って言ったのよ。それでね、私<津軽海峡冬景色>を歌ったの。ちょっと恥ずかしかったけど、演歌って言えばそれしか知らなかったから・・・」「ふんふん、それで?」「でね、今日の朝、△君に聞いたんだけど、私が<津軽海峡冬景色>を歌ったってことを○君はあとで、すごいバカにしてたんだって、私それ聞いてショックで・・・」「へえ、そりゃひどいね。演歌歌って欲しいって言ったのは○君だもんね。」






私は男のリクエストで<津軽海峡冬景色>を歌ったにもかかわらず当の男にバカにされ、ショックを受けた女の子に少し同情してしまった。その女の子はきっと男に気に入られようとして、歌ったに違いない。






しかし、真実は分からない。女の子の本心は実のところ全然ショックを受けていなくて、同僚の前で可愛い子ぶっていただけなのかもしれないし、男も男で、本気で演歌を歌って欲しいと思っていないにもかかわらず、ついつい酔ったついでに言ってしまっただけなのかもしれない。そしてその子が演歌を歌ったということをコバカにすることによって、おさまりどころの悪い気分を消去したかっただけなのかもしれない。