「砂漠の小舟」上映+上映記念ライブ4days 覚書(その3)

 

 

 

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二十代、西原多朱と一緒にやっていた頃。カメラはFUJICA ZC1000。

 

 

 

 

さて、だいぶ日が経った。現在6月11日の深夜である。ロードショー+ライブアクトのツアー最終日5月27日は京都のJAZZ居酒屋ZACBARAN。もうずいぶん前のことのように感じられるが、3週間前である。現代社会において3週間前とは「ずいぶん前」と「ついこないだ」の転倒が起こりやすいスパンなのか?「近過去の遠さ」という遠近感の逆転もある。/// さて、ここでレポートしておこうと筆を立てるのだが、一体全体どこにフォーカスを当てていいのか、わからない。時系列でありのまま書いておけばいいはず、だが、何かが躊躇させている。とりあえず時系列で序走してみよう。前日26日アニーズカフェでの深酒もあって、すまん、起きるのは遅かった。香村さんといくつかのメールのやりとりがあり、「会場入る前にゴハンでも行こう」となった。待ち合わせ時間に遅れた。(深夜にウェブサイト JazzTokyo上の橋本さんのインタビュー記事を読んでいて、彼が同志社大学に通っていたことを知り、Zacと同志社大が近いことからそういうことを含めての投稿記事を京阪に乗車しながら書いていたが熱中しすぎて2回乗り過ごしてしまった、んで、遅刻した)。

/// 京阪電車の「神宮丸太町」駅改札出たところ。香村さんは小さな台車のようなものに、チャンゴ、鳴り物などを積載している。聞くとパーカッショニストの佐伯君も同じ台車スタイルらしい。荷物という永遠の課題。バゲッジ&ティケット。エティケット。/// 少し歩き、「うーんなるほど、観光地値段?」とか言いつつそぞろ歩いていたところ「第一旭」(わりとお気に入り)があったのでそこに入った。腹ごしらえをすませ、会場に向かっていると、ズンドコと原始低音の叩きもののの音がしてきた。京大熊野寮というなんとなく昔遊んでいたようないなかったような空間。大学独自のフリーダム感溢れるお祭りか何かをやっていた。賑わっているのをよそ目に、歩くとすぐにZacに着いた。店長の真子さんとコック長とに挨拶。前にも会った。前回年初め、大雪の日にZacに来た時に、カレーピラフを食べながら「あー、ええなあ。スクリーン備え付けなんや。」とかそういう会話をしているうちにZacで上映することが一瞬の雪崩のように決まったのだ。天井吊り下げロール式のスクリーンがあるにもかかわらず、前日のアニーズカフェでの上映がかなり気にいったので、120インチを持ってきた。ステージ上のドラムセットやアンプなどを片付ける手伝いをし、設置。映写テスト。良い、何が良いのかというと、自立式なので、スクリーンの位置を変えられるということに尽きる。ステージ前まで持って来られるので、そこそこの迫力が得られるのだ。ライブ演奏の時は奥に引っ込める。これが良い。床にはっているコード類にガムテープで養生をする。足が引っかかるからね!…準備がほぼ整い、来客を待つ。ビールをたのむ。店長の真子さんも「私も飲みながらやるわー」とコロナビアを開ける。乾杯。そうやな、ビールは水みたいなもんやしな!と気心知れた仲だ。(マジで付き合い長いです彼女とは)。/// 飲食店営業も兼ねての上映会なので、食事のオーダーが入る。その間、会場照明の暗転スイッチの確認、ライブ撮影時のスポットライトの調整などをする。おお自由だ、なんて自由な空間なのだ。料理が出来上がるまでの時間で開始が遅れる、外に食事に行った川口君にメールをいれる。そして香村さんの夜行バスの時間が間に合うかどうかが気になり、ライブ順番を入れ替えるか?の提案をする。待ち侘びているだろうお客さんらにもお詫びのひとこと。結局順番を入れ替えることになった。料理が出来上がり軽く挨拶し、スタート。ほぼ満席だったので玄関ドア前、スクリーン横でしゃがんで観ていたのだが、上映中にも通りがかりの人?がやってきて、対応。そのほとんどが京都の観光客だと思わしき外人だ。「アベカオルは知ってるか?タカヤナギは知ってるか?」そんなことは聞かない。/// 京都は娯楽量、その手のイベント量が東京に比べて圧倒的に少ないため、地元の人は酒を飲み、本を読み、クダを巻いている。古本屋に行き適当に一冊買い、小さな飲み屋に行き、飲みながらつらつら読んで、出来上がってきたら素性不明の隣の者とボソボソ話し始め、じゃあな、と名前も聞かずにわかれる。これを一ヶ月続ければ知り合いはかなり増える。それが京都だ。SNS時代になって今は変わっているかもしれないが90年代00年代はそうだったな。ゆるく、そして不毛な議論が多い。見ても聞いてもいないのに批評する。とにかく親身になってケチをつけ、批評、評論する視点というものを必ず持っている。良かれ悪しかれだが「なあなあ」が嫌いなのかもしれない。SNSなどクソだ、無粋だ、俺は新世紀のボードレールだ、と息巻いている京都人は少なからずいるだろうと思う。(いないか笑)。/// 祇園、先斗、木屋町の階級格差が都市設計上フィジカルかつ可視的にあり、だいたいは木屋町で終わる。東京ではもっと分散しているが、新橋と銀座、赤坂の階級格差に近いかもしれない。/// なんだろう、先祖代々の家系で着物や焼き物の絵付けをやっている人、西陣方の人らもかつてはけっこう安酒場にいて、「あのですねー江戸時代に京都に出回っていた顔料と言いますのはー」とかなんとか、それなりに面白い話を聞けたものだが、今はどうなんだろうか。東京に居る人らから「京都ってジャズの街ですよね。」と数回言われたが全くピンと来ない。「京都は日本共産党の牙城ですよね」これも全くピンとこない。岡崎動物園のゴリラの花子、これぞ京都!笑。だがそう言う者はいない。ただ、Zac店長の真子さんも生粋の京都生まれ育ちで、ゆえに京都風が存分にあるとおもう。これは言えるし、ピンと来る。そうね、京都はジャズというよりもブルーズ、レゲエかもしれない。(そういや、村八分の拠点は伏見だった、とアニーズのオーナーさんが言っていた。+当たり前やんけ、稲垣足穂加藤和彦も伏見じゃ。)

 

 

 

 

さて、上映が終わり、ライブが始まった。演奏、香村/川口、今回は「突入感」があり、ちょっとした「暴走」もあった。今回ツアーのフィナーレ、ファイナルというニュアンスも含んでいるのだろうか。即興音楽ライブ映画もそうだが、結局のところ、即興演奏の聴取は「意味を追う」必要性に駆られないのだ。言葉によって、またモード、コードによって「照れる」感じが全くない。そこが最も好きな部分かもしれない。見るまま聴くままに酒を飲んだり、飯を食ったり、多少のおしゃべりもあっていいと思う。そりゃ、演奏している方は死に物狂いかもしれんが、観客の方はひたすら気楽な体制でいいのだと思う、という私見。/// なんでも選り好みせず聴く方だけど、クラッシック、現代音楽のコンサートだったらそうは行かんだろう。即興音楽はもっと世俗的、庶民的であってもいいのだ。前衛と原始回帰のループ、その透明性から、いったん距離を置くべきなのかもしれない。音楽とはそもそもの初めから、語の真の意味でナチュラルな、そして「猥雑な」モノなのだ、(だから)「宗教的たりえた」という原始回帰的開きなおりは永遠のものだろう。北村池田のDUOはしかし、和音構成もつらつらとあらわれ、聞き心地の良いフラットに流れるものだった。マイルス、ビル•エヴァンス以降のモダンジャズへの桎梏をひさびさに聴取できたように思えた。と言えば褒めすぎか。(カメラを回しながらのことだけど、それはそれで悪くはない)。

 

誘った西原多朱が観に来てくれた。京都にはスペース•ベンゲットという東京でいえば(もうない)早稲田高田馬場のアクトシアター的な極上地下的前衛的自主上映場所が四条大宮の北海道料理屋の上にあって、彼女とはそこでともにスタッフをやっていて自分の8ミリ映画のカメラをやってくれていた。それはそれは20年ぶりの再会か。なんというか、髪型、ファッションセンスが昔と全く変わっていないということに安心する。イベント終了後は彼女と途切れることなく飲みつつ閉店まであれこれと話し込む。詳細は書けないことばかりだが、なんとなく大きいスパンで一回転したのだな、と思った。けっこう酔う。閉店後、泥酔の泥を払うため、鴨川べりの緑地で休憩。1時間ほどそこで寝てしまいその後タクシーで街中まで。荷物をロッカーに預けて朝まで飲み続行。さっきまでのことはすっかり一旦忘却。店移動中に知り合いとすれ違ったが女連れだったので声をかけるのはやめておいた。

 

 

さて、このまとめレポートも終わろうとしている。思えば関西3DAYSの前には5月11日、色硝子のライブとともに東京阿佐ヶ谷で上映した「砂漠の小舟」。5月に4ヶ所飛び地でやるという無謀感もあったができないことはない。なんでもやってみるべきだ。「イエローヴィジョン、ギャラリーノマル、アニーズカフェ、ザックバラン」。…「ライブハウス、ギャラリー、ライブハウス、ジャズ居酒屋」である。こういうスタイルで映画上映できるのなら、ずっとやっていきたいし、ハコもんに拘らず、極端な話、動物園とか植物園とか谷中墓地とか不忍池とかなんとか工業地帯、見知らぬ辺境地、とかでもやりたいね。どこへでも行きたい。映画館では1日だけやりたいし、やるべきだと思っている。ちゃんと選ぼうと思う。/// ともあれ東京ではなるべくコンスタントにどこかで、いや然るべき場所で上映続けるとして、制作予定としては7月いっぱいに中編の新作を完成させて、8月中に多彩でインパクトある上映イベントをとりあえず1日やって、その後はすぐに長編の新作に取りかかりたい。映画館にこだわる意味ってそこまであるか?旦那に出す夕食、そこまで皿に拘る必要あるか?しかし、制作の方にもっと注力したい。…日曜日のいい雨だ、アストラッド•ジルベルトを聴こう。

 

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