行ったことがないところへ行きたかったので府中競馬場へ行った。入場券を自販機で買って中に入る。「ようこそー。」と、競馬レディたちが迎えてくれる。おっさんがウジョウジョいるなかでカップルがちらほらいたりする。地べたに座ってうどんをすすりながら競馬新聞に釘付けになっている人や、わりとでかい声で独りごちっている人もいる。耳の上にちょこっと乗せた赤鉛筆に「耳は鉛筆立て」を感じ、そしてちょっと開放的な気分になる。






府中競馬場は、なんでも○年がかりでちょっとずつ改装して、ついにハイテク仕様になった、とは聞いていた。なるほどメインスタンドの巨大画面から流れるCGやわりと音質のよいサウンド、トラックのぐるりに設置されたテレビ撮影用の塔のデザインなんかは、ハイテクぶりを感じさせる。(しかし、「なんのひねりもないハリウッド調やなあ」と思ってしまう)。







ビールを呑みながら人ごみから離れてブラブラしていると遠くに馬がスタートする際に、馬をストップさせておく鉄柵があったので、近づいてみる。警備員のおっさんが立っている。「次のレースは何時始まるんですか?」と聞く。おっさんは胸のポケットをまさぐりながら「あれ?、ここにパンフレット入れといたんだけどねー。ちょっとわかりませんねー。」と返す。そして5秒くらいの沈黙がはさまれ、間がもたなくなって「いやー、それにしても素晴らしいハイテク仕様ですなー。」と私がテキトーに言うと、おっさんは「ここは世界で一番でかい競馬場なんです。そしてあのハイテクワイド画面、しかも二分割式はここ府中競馬場にしかないんです。京都競馬場が真似して、これから導入しようとしているんです。」と、ハイテク自慢話を初めた。その言い方は「ウィンドウズXPを使っていなければもうそれはハイテクではない、i-podで音楽を聞いているのでなければ、もうそうれはハイテクではない。」と言っているアホな兄ちゃんとそう変わりはない。






あと、馬のファッションというか、お洒落を観察していた。「これからこの馬ちゃんが走りますよー、みんな予想してねー。賭けてねー。」みたいなプレレースの「馬お披露目場所」があってそこで「はよ、ウンコせえへんかなー」とか思いながらじろじろ観察していたのだ。たてがみなんかはバシーっときれいに揃えてあるし、そのわりに馬が恥ずかしげにかむっている仮面みたいなものはどうしても「ボンデージファッション」を想起させる。あと、よく見ると馬が靴下みたいなものをはいているということに気づいた。そして私はルーズソックスをはいている女子高生風の馬を探したのだが、それは見当たらなかった。