帰省記 2

 

 

 

1週間ほど京都に帰り 東京に戻ってくる

歩いていて 5センチほど「浮いている」と気づいた

「私は5センチほど浮いている」のだ

どういうことか

そうでないと歩けないことに気づく

正確には「浮いている」のではなく「浮かされている」

 

遠心力 この魔法

たとえば洗濯機のなかでの渦巻き それは隠されている

からみあう袖 からまってはいけない袖 接触への過敏さ

改札口を出る 放たれる

そして渦巻きへ 中へ 外へ また中へ ぶつからない ぶつかりそう

「私は浮かされている」だが決して「飛べない」ようになっていて

これは都市というものの巧妙さ 狡猾さである

 

群衆とは「名を奪われた者」

その中の「名づけ得ぬ者」を探す

重力の都 浮力の都 怪力の都 無力の都

「気づいている」人々の流れ

出会いは湿っぽく、別れは乾いている

 

 

 

 

 

冬は強張り 夏は緩む その表情

太陽の熱量 熱の波は肌の露出を助けて

その分 感覚する器を育てる

科学的にも 文法的にも

「夏の顔は みんないい顔をしている」

太陽光線の過剰 この無意味な豊穣から 硬すぎる宝石のような光線から

笑いを生む 都市の遊歩者にまとわりつく この無意味の享楽 頬を緩ませ

涼しい夕暮れを迎え

情のもつれあいから

発砲事件のような喧嘩もまた展開する

熱い国の涼しい夕暮れの一瞬の火傷

 

アジアヨーロッパアフリカその他
外国人観光客が彩りをあたえていた

どういった重力の磁場を感じるのか

この地に

 

私は

後鳥羽院天皇

正伝寺の枯山水 血天井

保田與重郎の自邸跡

建仁寺枯山水や絵画、襖絵

を見て回った

 

もっと若い頃からこういう文化遺産に付き合うべきだった と

嘆かないわけではない