5月4日、快晴、B4の2枚の紙に手書きで書かれたメモをもとに長編をすすめているのだが、暫定的に決めていたロケーションで妥協するわけには行かず、ロケ地を朝早くから再び探しに行った。東京のこんなに奥地まで来たのは初めてで、だいたい「田舎の感じ」の予想はついていたものの、山の斜面に半ば暴力的につくられたようなプラント(セメント工場)や少し歩いたところに見られる工場の寮やそのあたりをうろうろしているときにたまたま寮から出てきた中学生くらいの男や、彼の母親だとおぼしき人がなぜか「こんにちは」と声をかけてきたことなど、なにかと不快指数が高くなる新宿や渋谷の人ごみとは決定的に違う、田舎に住む人の「自然な振る舞い」みたいなものをひさびさに感じた。(だからといって快指数が高まるわけでもないが)。その後、山の中腹のさびれた食堂で食事をとって、コカコーラの色あせた看板をちらほら見かける中、歩をどんどん進めた。コカコーラがその象徴色として「赤」を主張していたのはある時期までで、現在都市部で見受けられるのは「赤」ではなく、より「カラフル」なものだ、なぜだろう?とかそんなことを考えつつ。