イタリアン・ルーレット




備忘録。渋谷、午後6時、文化村で「印象派展」を見たあと、友人の紹介で、アサオさんと会う。映画の段取りのための段取り。アサオさんは映画監督であり、日本で五人しかいない特殊装置技術者。だが、彼の映画はまだ見ていない。性能の良いマシンガンのような関西弁口調。落語家的しゃべくり。あのいいよどみのなさ、いい間違えのなさは、よほど訓練されたものだろう。体全体でリズムをつくっている。言葉のリズムと身体の動きがぴったり同期している。ぼくとはまったく違う人柄で妙に魅かれてしまった。サム・ペキンパー監督、ウォーレン・オーツ主演の『ガルシアの首』(1974)の話をこんなにしたのは初めてだろうか。デニス・ホッパー監督、デニス・ホッパー主演の『ラスト・ムービー』(1971)の話も。ぼくにとってのアメリカ映画はこの二本になる。めまぐるしい環境で逡巡することも多いといえば多いが、どうってことはない、作品を作ればいいのだ、これに尽きる。午前3時、渋谷の雑踏は停滞せず。スキンヘッズの不良が工事現場のポールを振り回す。やり場のない怒りをぶちまけているのだろうか。店を三軒梯子して、朝6時まで。薄明を走る電車内で腕を組み、立ちながら目をつむっている女。寝ているのか、それとも考え事をしているのか。鞄には「CIAO!」の文字。