Randonneur from channel zero ♯1







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それはそうと、ワープロのキーボードを目の前にするとなんとなくキーを叩いてしまうものだ…けど、それはギターをさっと持った時に必ず〈このコード〉を弾いてしまうことと同じだろう。僕は16歳の時からDmというコードを弾くようにしていたが数年前おそらく2010年あたりからはEになった。Eの方がおさえるのが楽だというその点において。(ちなみにピアノを弾く人も同じような手癖があるようだが、包丁を持った時に必ず○○を切る、なんてことはない)。そうそう、ワープロを目の前にして指がキーに触れたがる。モノとはだいたいそういうもので触る目的がなくてもなんとなく触ってしまうものなんだ。そういうわけで僕はこれから何かを書こうとしていることは確かなんだが、何を書きたいのかはあまりはっきりしていない。おっと横道に逸れた。そうそう、この文章は〈それはそうと〉で始まっているが(ほんの10分前あたりにキーをパンチした)実のところノートパソコンの蓋を開け電源を入れ、画面が立ち上がり、テキストファイルを開け電子の白紙が出現したその数秒後、僕は〈きおく〉と入力しそれを〈記憶〉に変換したのだった。なぜ〈きおく〉なのか、その理由ははっきりしている。とにかくKIOKUのキーはすべて隣接していてKIOKUが一個の塊、ゾーンになっているのだ。だから打ちやすいし打つのに時間がかからない。パッと一気に打てる。〈記憶〉という語や意味は嫌いじゃない。好きでもないが、とにかく嫌いじゃない。そして〈記憶〉という語にはどこか独特のカッコよさがある。キラキラと光る銀色がだんだんとドス黒くなってゆく覚悟(どんな覚悟だ?)を抱えている。なんせ億の世界だから数えられるものじゃない。百鬼なんてのは数えられる、万引きも数えられる、だけど記憶はなんせ億だから数えることができない。だから記すのだ。さて、〈それはそうと〉ではじめたこの文章も、だいたい文字が埋まってきた。もう書きはじめてから20分も経っただろうか。









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