運命的デザイン

運命的デザイン。蚊取り線香という物体は、外側から内側へ向かう渦巻き状の線で構成されている。外界の空気圧に比例して、一定の速度を維持しながら、火種を内側に、さらに内側に移動させてゆく。移動とともに、緑色の固形部が灰になって落下する。火種が固形部をじりじりと燃やし続け、内へ内へと漸近し、そしてついに中心に達したとき、一本の蚊取り線香の生命は終焉を迎える。見事なのは、その灰が、「それはかつて緑色の固形だった」という事実性をまだ残していることである。形骸、しかし残存。近過去を留めている現在の姿。そうして、かろうじて固形を維持しながらも消滅を待つ灰は二重拘束されている。「灰でありながらも固形」「物質でありながらも物体」アトミズムとホーリズムの挟み撃ち。遅滞もなく、加速もない、蚊取り線香の一定的逃走線。すべてが灰に帰し、中心が消滅する時、周縁も消滅する。したがって全体も。次へ。