ジャニスはサザン・カムフォートが好きだった。



ジャニスはサザン・カムフォートが好きだった。
あのうんざりするほど、甘ったるい酒。
何種類ものフルーツをベースにした、メンフィスで考案された酒。
1878年、トマス・エジソンが蓄音機の特許を取得した年に。




あの、うんざりするほど甘ったるい酒、
サザン・カムフォートをステージの脇に置いて、
ジャニスは、あのささくれた、しゃがれた声を出した。




「ねぇ神さま、私にベンツを買ってくれない?
友達はみんなポルシェだし、巻き返さなきゃ。
今までずっと働き詰めで、誰からも見放されていたの。
だから神さま、私にベンツを買ってくれない?」

          



彼女は
その、うんざりするほど甘ったるい酒で、
冬の枯木のような声をうるおして、
南部の安らぎ、という名の酒で、うるおして、
ステージを終える。






それにしても今日は、いい雨が降った。心安らぐ雨だった。







「ねぇ神さま、私に夜遊びさせてくれない?
頼りにしてる、神さま、だからがっかりさせないで。
お恵みをちょうだい、あなたが私を愛しているって証明して。
だから神さま、私に夜遊びをさせてくれない?」

ジャニス・ジョプリン「ベンツが欲しい」1970)