現代戦争ノート 3




■ 現代戦争ノート 3





たまたまデモに出くわして、号外をもらった。デモ隊は200人くらいで、白地に赤のいわゆる「日の丸」が50旗ほど見える。構成員は中年層の男女半々くらいだが若者もちらほら見える。号外は『桜新聞』のもので渋谷に本部があることが紙面から確認できる(渋谷区渋谷1−1−16 若草ビル)。やや保守よりの組織だろうか、マッチョで剛健な右翼団体には批判的な、中和化された新進右翼団体といったところか。紙面は「尖閣諸島問題」をめぐるもので黒字白抜きの太ゴチック体で「尖閣が占領の危機」とある。





尖閣諸島付近における中国漁船衝突事故の報道は、始めはインターネットの動画サイトにおける海上保安庁の「映像流出」をめぐるものだったが、現時点、つまり違法操業で容疑者として勾留されていた中国トロール漁船の船長が11月25日に沖縄地検による裁決によって釈放されて以来は、その批判、「日本の政治外交の甘さ」に対する批判に移行してきているようだ。




それはそうと、この号外で興味深かったのは、2つの地図が採録されていることだった。ひとつは北京地図出版が1958年に発行した地図で、もうひとつが1971年以降、中華民国(台湾)の中学校の地理の教科書で使用されている地図である。前者においては「尖閣は日本領」であったことが記載されているのに対し1971年のヴァージョンでは、「尖閣」は中国領の「釣魚台」へと捏造されている、このことが指摘されている。1970年までは日本の領土として認められていたが、なぜか71年からは中国の領土となっているのだ。詳細な史実を追わない限り、この記述変更が捏造なのか真理によるものなのかは知るよしもないが、いずれにしても尖閣諸島付近領海の石油埋蔵(ウル−マテリア)をめぐる「隣の芝は青い」式の「財の取り合い」による攻撃だったことには違いないだろう。




なお、紙面は次のことをも伝えている。そのまま記載しておく。


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(略)・・・さらに中国は、来年の六月十七日、恐るべき計画を発表している。世界各国の華僑や反日組織を動員して100隻から600隻の民間船を香港、マカオ、台湾その他に集結させ、民間人を装った中国人民解放特殊部隊や中国海軍OBなどを動員し、尖閣諸島周辺海域に全方向から侵入し、尖閣諸島各島に上陸、侵攻し、占拠を目指しているのだ。彼等は本気である。戦後六十五年、主権国家日本に対して、ついに「直接侵略」が開始されようとしているのである。



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北京オリンピックと上海万博以降の「バブル崩壊」による政治経済の内部混乱(階級落差問題による混乱)がこういった強行へと向かわせていて、その主要因を中国共産党一党独裁に求めているのが紙面の基調である。



ミリタリーバランスの維持と国防費の増長、そして物品の値上げ、税金の拡大政策・・・おそらくは、敵国に「無言の圧力」をかけることに終始する無頭人たちの紙幣。これでは米ソの冷戦構造が縮小最生産されているだけではないか。露骨なファシズムナショナリズムは訪れないにせよ、企業や家庭、さらには個人が投入する「防災費」(防災による管理、というよりも安全幻想という商品の購入)の増長は「国防」という考えとどこかでつながっている。(2010−12−01)