チェ・ソンベ+香村かをり @西五反田Permian (+「テオレマ」を思い出す)

日本ツアーで来日中のチェ・ソンベ(雀善培)+香村かをりの即興演奏。西五反田Permian 。

予定していた演奏家がキャンセルで、後半飛び入りの邦楽器をあやつる人も参加。

チェ・ソンベは韓国のフリージャズ、インプロ演奏の第一世代にあたるそうだ。

日本でいえば阿部薫以前、高柳昌行や彼が中心にいたニューディレクションの周辺あたりの世代か。


日韓関係というよりも韓国独自の文化について詳しくはない。むかし読んだ高橋悠治の「たたかう音楽」で韓国の文化状況についての多くの記述があったと思うが…。韓流ドラマも1秒も見てなかった。


1990年代頭頃の話。映画館で映写のバイトしてたときロビーにあるポスターの「コリアン・ニューエロス!」という文字が飛び込んできた。「桑の葉」というタイトルで、それふうの女優が横たわっている。それは韓国でポルノが解禁されたという意味だろう。日本の日活ロマンポルノは1971年からあるのだから、ところ変われば事情が異なってくる。これは記憶内にとどまっている。

 

パゾリーニ監督の「テオレマ」(1968)というイタリア映画があり、大好きで100回は観ていると思うが、その中で流れるエンニオ・モリコーネによる劇伴を思い出したのだった。昨晩聴いたチェ・ソンベのトランペット演奏のなかで断続的に数カ所出現したフレーズが「テオレマ」の劇伴(テーマ曲だと言ってもいい)を想起させたのだった。ゆったりとしたムード溢れる感じで映画劇中ではモーツァルトのレクイエムの第一楽章ラクリモーサとともに交互に現れるんだけど、チェ&香村、飛び入りの人が奏でる「アリラン」や「オールドフレンズ」「kamifusen」など多彩多様な演奏の中でもちょっと異風な感じのフレーズでよいアクセントになっていたと思う。

 

「テオレマ」はとあるブルジョア屋敷に突如美青年が訪れてなぜか住みついてしまい、家族をメチャクチャにしてゆくという話。冒頭美青年テレンス・スタンプが芝生の庭の椅子に座りタバコを吸いながらランボーの「地獄の季節」を読んでいて、フト灰が落ちたところ、それにきづいた(ラウラ・ベッティという女優という以上にパゾリーニの実際の愛人が演じる)家政婦が払いおとしに彼に近づくというシーンで灰の落ちたベージュのスラックスの股間がドアップになり、「エロ〜」とか思うんだが(笑)、それとは別のシーンで画家を目指している息子がフランシス・ベーコンに憧れてるのか、壁に飾ってある(男性器のメタファーとして捉えることができる)「磔刑のキリスト」のポスターを眺めやったすえ、苦悩し、自身の絵に小便をぶっかけて描く(ピス・ペインティング)という無謀に出たりで、パゾリーニの一線超えたハチャメチャな演出が面白い。そういえばイタリアも半島だ。

 

韓国は半島で日本は島国だという認識は重要だ。そして半島は大陸の果てにあるという認識はもっと重要なのかもしれない。部屋のホコリが隅に溜まっていくように、半島には大陸の何かが流れ込んでくる。こういうことに対する想像力や、そこから起こる認識。

 

(敬称略)

 

 

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