■制作記1 スコアティックシナリオ














■制作記1 スコアティックシナリオ





『こちら、あちら、その他』 完成まで随時、必要に応じてメモを採っておきます。スコアティックシナリオに関しては2013年の初夏あたりからぼんやりと考えていて(Facebookノート 2013年7月記入)、今作が、その初発導入となります。明日から撮影に入ります。





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今回も前作『ベスト・リカーズ』と同様、分散的に切り取って、重層的にモンタージュしていくという<撮影−編集>の流れであるが、今回はマテリアル(素材)を全面的に記号化したうえで時間軸(タイムライン)に組み込んでゆく。この記号化/形式化が音楽の楽譜(音楽を譜面におとしこむ作業)に似ているため、便宜的に<スコアティックシナリオ>と呼んでおく。マテリアルそれ自体の分類は「諸カテゴリー」として機能させるが、ここに方法がいる。たとえばネット上で「検索」する上で重要な手法となっている<タグ付け>は単一の素材を複数解釈することに基づいていて、これは記号処理の初歩的なものである。マテリアルのカテゴライズは、通過すべきである。なぜなら、タグ付け(カテゴライズ)一般は、コンピュータのネットワーク上で超合理化に向かい、そして反面制度化されているからである。


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基準点。数学における「ゼロの発明−使用」が、数理の基礎となっているとする。たとえば西洋音楽においては、五線譜とト音記号ヘ音記号の使用が、「音階の基準」を設定している。(同様に標高などにも基準点が設置されている)。スコアティックシナリオにもとづく映画制作においても、こういった規則を導入できる<ゼロ基準>が必要であり、「プレイス−ヴァリュー」を決定する決定値があるかないか、いわゆる「位置取り」があるかないかによって、作品のコアの有無の如何が左右されるように思われる。


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歴史的にかんがえて、もちろんスコアは「楽器の構造」によって規定されている場合が多い。(音が鳴るということは構造の結果である)。諸楽器の音階、音程を近代ヨーロッパの記譜法に単一還元可能なものとして見なすことは一般的な<音楽−政治−経済力学>となっているが、もちろん非西洋近代の記譜法にも着目すべきであろう。グレゴリオ期、バロック期、ルネサンス期はもとより、東洋、それ以外の周辺にも着目し、スコアの形式を複数化して作品に内在化させても興味深い結果がでるだろう。(やるかどうかは別として)。



                                           (以上2014年2月22日)