近況























21時16分・・・・大量の雪が降り、地表が凍りついた・・・視覚性生物系統のツーピースは、雪の白が、ややあおみがかった白が、視覚にあたえる影響について考えていた・・・数分たつと、パウル・クレーの淡い色彩のようなグラデーションにゆっくりと変化するように思われた。神が雪に着色しはじめたのは・・・絵筆を猛りくるわせたのは・・・だが、数時間たっても、極彩色にはならなかった。迷彩色にもならなかった・・・ツーピースは、雪のサイケデリアをポストモダンアトラクションとして組織しようとしたが、神はそれを許さなかった・・・




2時50分・・・大量の雪が降り、地表が凍りついた・・・触覚性生物系統のスリーピースは、雪の堆積が地表に与える衝撃について考えていた・・・これが一気に溶け出すと・・・微生物たちの生態に変化を及ぼすことになる・・・地表のマゾヒズム、土地のマゾヒズムについて・・・そうだ、鞭打たれるような地表面・・・悲鳴をあげている表層・・・雪を着たヴィーナス・・・おおワンダ・・・




4時09分・・・大量の雪が降り、地表が凍りついた・・・工作性生物系統のアマデウスは、竹やぶに入り込み、一気に竹馬をこしらえた・・・そして、交通の全面麻痺、遅延に備えるべく、竹馬で池袋に向かうことにした。・・・・今年はなんといっても馬年だからね・・・・古めかしい外套を羽織り、手袋を2重にした・・・竹馬歩行をより強力にするために、防水スプレーをほどこした・・・




6時00分・・・初台のオペラシティのあたりで急に眠気が襲いかかり、彼は寝ながら竹馬を前進させていた・・・そうそう・・・笹塚のあたりで・・・どういうわけか・・寝押しの文化について考えはじめたのだ・・・・そうだ、むかしの少女たちは、制服の寝押しをしていたもんだ・・・あの文化は、霊的な文化、いわば憑依文化的であり、日本人が・・ある種のアジアの周辺が「型・・・カタ」を大事にするということなのかもしれない・・霊気をより周到に封じ込めるために・・・折口信夫がどこかで言っているかもしれない・・・母が娘のスカートのプリーツ・・・襞をより確定的にする・・・これは母子愛の伝達形式であり、それ以上に家の重力に支配されていた・・・



・・・愛が最初にあって、そこに折り目をつけるのではない・・・フォーマルな折り目/襞それじたいが愛なのだ・・・



7時50分池袋・・・雪が溶けはじめた・・・アマデウスはモーニングを食べるためにリリーズコーヒーに入ろうとして、竹馬を降りた。その玄関には傘袋が用意されてあったが竹馬のそれはなかった・・・「おはようございますいらっしゃいませ!」・・・おねえさん・・・竹馬用の袋は・・・いえ、これを店内に持ち込んでもいいですか・・・・・いや、そうじゃない・・・アマデウスはもういちど竹馬のステップに足を乗せた・・・ガスガスガス・・・「背が高いですねいらっしゃいませ!」・・・「・・・しかし池袋のみんなは早口だな・・・モーーーーーーニーーーーーングをひとつ」。・・・「ヨーロッパ圏におけるフリル文化・・・に対するアジア圏におけるプリーツ文化・・・バロックポロックバルテュス・・・」