通常、われわれが「ジャンケン」(finger flashing game)と呼んでいる単純なゲームは、グー、チョキ、パーの三要素において成立している。そして、なにかを決定しなければならない時に、その場で導入されやすい、勝ち負けを決定するのに手っ取り早い「ゲーム=規則体系」として親しまれている。



グー、チョキ、パー、それらの手の表情それ自体には何の意味もない。それらが有意味な現実性を帯びるのは、ジャンケンというゲーム=規則のなかでのことである。「グーはチョキよりも強い」などの力関係のルールに則った上で、その3つは関係づけられる。これは手の表情の要素還元であり、構造化である。ジャンケンにあってはおよそたくさんあるだろう手の表情を三つに析出したうえで成り立つ。ジャンケンにおける手とは、純粋な手の表情の差異化の帰結であり、それらの表象の規則化において、力関係が構造化されている。